巨大トリュフ腐る



もう随分前、2004年12月8日のことですが、英国はBBCのニュースに、2万8000ポンド(約550万円)の巨大トリュフを、ロンドンの超一流レストラン「ザフェラノ」が、これを腐らせてしまい、「埋葬」したというニュースがありました。


http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/london/4079041.stm


このトリュフ、重さ約850グラムのイタリア産で、レストランの客たちが組織を作って共同で購入し、レストランに預けてあったもの。「危機にある子どもたち」というチャリティーの募金向け宣伝として買われたものだそうです(ここの論理関係は不明)。


主任シェフが休暇から帰ってみると・・・・・・あまりに何日もディスプレイされ、金庫に納められ、を繰り返したために、ご芳香が悪くなってしまったとか。


レストランのマネージャ、エンゾ・カッシーニ氏は、このトリュフ、長いこと放置されすぎたと語っています:「トリュフは果物のようで、いとも簡単に腐ってしまいます。人々が見れるように、長いこと置かれていたことが問題でした」。「遠くはパリからも、このトリュフを見に訪れる人がいたのです」。


カッシーニ氏は、このトリュフが食べれなくなって、「ちょいとだけ、落ち込んでいます」と語った。「でもまあ、たくさんの子どもを幸せにしたので。それに、来年はもっと大きいのを買いますよ。もう、捜しはじめているんです」とも。


「ザフェラノ」は、このトリュフを買ってくれた顧客グループへの賠償として、2000ポンドのトリュフを買ったと言う。


くだんのトリュフの写真は、これ↓[BBCさんより]。





後日談


ところで、10日を経た12月18日(土)、BBCニュースに、このトリュフ様の後日談がありました。


http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/4107083.stm


題して「記録破りのトリュフ、故郷に帰る」。


一部を抜粋。



美食家やジャーナリストの間でこの記録破りのトリュフに巨大な関心が注がれてきたにもかかわらず、一週間にわたり、レストラン・マネージャーのエンゾ・カッシーニは、ナイフを入れることを拒んできた。


そして、想像もしなかったことが、起こった。


世界で最も値の張るこのトリュフが悪くなり始めたのである。


腐れが出始めたのである。


かくして、食べられなくなった。


この最も貴重なるトリュフの不幸な運命を耳にしたフィレンツェのトリュフ専門家たちは、かのトリュフの帰還を求め、厳粛なる葬儀を執り行った。


カッシーニ氏によりトリュフの遺体が故郷に戻されたのち、葬儀は、メディチ家が建てた歴史的城館の地で執り行われた。


別れの詩が読み上げられたあと、トリュフは厳粛に、生まれた地のほど近くに埋葬された。再生し、来年再び巨大トリュフとなる期待を集めつつ・・・・・・


ちなみに、上で「見れる」「食べれなく」と書いたら「ら抜き言葉」とかな漢字変換システムがメッセージを出しました。


ちまたで言葉のなんたるかを知らない(とりわけオヤジを中心とした)人々が「ら抜き言葉」を嘆いたりしていますが、まず、大きなお世話。大体そういうことをしたり顔で嘆くようなオヤジたちは、自分の肩書きが通用しないところではほとんどコミュニケーションができないで、奥歯にうんこをはさんだようにモジモジしてかわいげもなく、心底、滑稽で醜い。


次いで、らをつけたときに生ずる受身なのか尊敬なのか可能なのかをめぐる曖昧性も避けることができるので、主旨も明晰になり、うれしい。


ところで、トリュフ。日本の高級フランス料理屋さんでトリュフ・ソースとかのものを頼んで、トリュフの醍醐味を味わえたことは、私はありません。トリュフは、すこーし柔らかくなって、香りが強くなってから(性の魅惑に溢れる人の脇の下のような香りがツン、と出てから)、大量に使うのがコツ(だと思います:人によって好みは分かれるでしょうから)。


フランスはパリのムフタール通り(パンテオンの裏手すぐ)から一本入った脇道に、「ラ・トリュフュエール」という、キノコをふんだんにつかったフランス料理のお店があります。ここでは、トリュフのトッピング増量を注文することができて、それを頼むと、トリュフの味わいを楽しむとはこーゆーことか、と言うのがわかります。


たぶん、どちらかというと南仏系のレストラン。