ハタケシメジとクサウラベニタケ
秩父では(そしておそらく関東の広い範囲では)、ウラベニホテイシメジ[Rhodophyllus crassipes (Imaz. et Toki) Imaz. et Hongo]のことを「イッポンシメジ」と言います。ところで、いわゆる「標準和名」のイッポンシメジ[Rhodophyllus sinuatus (Bull.: Fr.) Sing.]は毒きのこ。
脇道にそれますが、本によっては「ウラベニホテイシメジ」のところで「イッポンシメジは禁句」などと書いてありますが、抑圧的でとても嫌な感じ。
それよりは、明晰に、キノコ図鑑関係に権力を握った私たちは「標準和名」として「ウラベニホテイシメジ」という名を選びましたが、秩父地方をはじめ多くの地域でこのきのこは「イッポンシメジ」と呼ばれており、標準和名を「イッポンシメジ」と言う毒キノコは秩父地方などでは同じく毒キノコのクサウラベニタケとともに「ニタリ」と呼ばれています、ときちんと情報を提供するのが、キノコ図鑑関係に権力を有するほどの「識者」の務めだろう、と思います。
さて、そのクサウラベニタケ[Thodophyllus rhodopolinus (Fr.) Quel]とハタケシメジ[Lyophyllum decastes (Fr.: Fr.) Sing.]の傘を並べて撮した写真が、これ↓
左がハタケシメジの傘で、右がクサウラベニタケの傘。
生える場所も違うし、そんなに似ていないのですが、少なからぬ図鑑で、ホンシメジやハタケシメジなどのLyophyllum、そして食べられるウラベニホテイシメジと、毒のクサウラベニタケやイッポンシメジとは似ていると書いてあるので、ちょっと並べてみました。
生える季節は、大雑把に秋。ただ、いずれも梅雨時にもぼちぼち見られます。
どのくらい似ているか、というと、まあ現物を手にすれば、その質感の特徴などで、はっきりわかります(小さいときはますます似てるけど、それでも)。
唯一、もしかすると混同する可能性があるのは、次のような場合:
- ウラベニホテイシメジを食べるのが好きで好きでたまらないけれど、鑑定はまだ初心者
- 立派なイッポンシメジ(クサウラベニタケはちょっと小型でショボいがイッポンシメジは結構立派でがっしりする)が見つかったとき(ウラベニホテイシメジはがっしりしている)
- それで「これが食べられたらなあ・・・」と思いつめ、それが高じて「これは食べられるだろう」になってしまうとき。
こうリストすると、笑い話ですが、通常、こうした状況を自分で「意識」しているならば安全。問題は、意識しないとき。
意識できないときの問題は、そもそも、自分が「これが食べられたらなあ」→「これは食べられるだろう」と考えていることがわからないこと。さらにそれが高じて、自分では「そんなこと考えていない」と思ってしまうとき。
そんなことあるの? という疑問もあるかも知れません。
でも、例えばパートナーとのケンカを何度か繰り返して、一応それを避ける段取りを合意して、それでもケンカしてしまったとき、多くの場合、自分では自分のことをちゃんと意識している気になっていて、「合意された段取り」だって頭に浮かんでいるかもしれなくて、でもそのときは、「これはそれとは違う状況だ」と思ってしまう。そんなことはありませんか?
それで、あとで思うと、「おやおや、今回のケンカもやはり以前合意した状況そのままじゃん」と思うようなこと。
まー、そんな感じです。
ハタケシメジの料理等については、また書きます。東京周辺では、そろそろアミガサタケが出始めました。