クロダイコクのソテー

クロダイコク幼菌



標準和名はムレオオフウセンタケ。関東地方の広い範囲でクロダイコクあるいはオオシメジといった愛称で親しまれています。10年近く前、秩父「かいじ」という名で店先に並んでいたこともあります。学名は、Cortinarius Praestans。


多くの図鑑に、石灰質の土壌を好むと書かれており、また図鑑によってはかなり稀なものとして紹介されていますが、関東周辺では、そこそこの収穫があります。写真は2003年10月半ば、奥多摩のもの。


このきのこは欧州でもなかなかの人気のようで、たとえば、
Gerhardt, E. Hongos de Espana y de Europa: Manuel de Identificacion. Barcelona: Edificiones Omega.
という本[ちなみにこの本は、欧州のきのこを収録したドイツ語の本のスペイン語訳です]の表紙にも使われています。


今年は、10月下旬に、写真のような幼菌のほか、傘の径25センチ、柄の根元の太さが8センチもある巨大なムレオオフウセンタケを一本と傘の径13センチ、柄の太さ4センチ程の中型のムレオオフウセンタケを採りました。いつも採る場所にはなかったので、誰かの取り残しかも知れません。


さて、お料理。ムレオオフウセンタケは肉質のしっかりしたきのこなので、その歯ごたえを楽しみます。特に強い臭いや味はなく、微妙なうまみ(「味にはくせがなく」という表現をいろいろなきのこに使っている図鑑は多いのですが、本当は意味不明)をもつきのこなので、それを生かした料理に向いていると思います。


私のお気に入りは、ガーリックハーブバターを使ったソテー(ステーキ)。大きく育ったムレオオフウセンタケに特によく合います。作り方は:

  • 中型から大型のムレオオフウセンタケの傘を切り分け、傘は半分ないし4つに切る。柄は2枚ないし4枚にスライス(柄の太さ次第です)。
  • フライパン(厚手のものがよい)にガーリックハーブバターをひと片入れて溶かす。
  • フライパンにきのこをのせ、中火から強火で焼く。このとき、塩(Fleur de Sel de Guerandeがお勧め:とにかく天然の海塩がよい)をひとつまみふりかける。
  • 皿に盛りつけ、醤油を少しだけたらして、熱いうちに食べる。



ガーリックハーブバターがきのこの微妙な味わいを殺すどころか、上手く引き出し、何とも言えない美味です。


ただし、写真のような幼菌では(この大きさのものは採らないことにしていますが)、きのこ自体の味がガーリックハーブバターの味に負けてしまいがちです。このときは、あまり香りの強くない植物油でソテーにするのがいいでしょう。


私の経験では、一般に、塩やバター、みりんや醤油などに上質のものを使うことがきのこ料理を美味しく作る大きなポイントです。